恋愛寫眞 市川拓司 2020/10/03~05
タイミングなのよね、といったみゆきの言葉が今でも残っている。初めから誠人はみゆきのことが好きで、大学を卒業していった。どこかしらで好きが重なっていたはずなのに、何も告げられないで終わってしまった。みゆきというほとんどの男の子が気になってしまう人でも好きな人の前に立って、愛されたいと願っている。当然のことだと思う。でも、なかなか気がつけない。憧れてしまい、まさか自分のことをなんて思いもしない。
この世界がもっと単純だったらいいのに。私はあの人が好き、あの人は彼が好き。そういった一方向で完結する世界だったら、いいのに。と、静流が言っていた。だけど、やっぱり両想いでいたいと願う世界だから難しくなってしまう。幼くて、女性として見られなかった静流はずっと辛かっただろう。いつも好きな人の好きな人を見ながら、彼女になりたいと願っていたかもしれない。でも、最後は誠人は静流を選んだ。でも、それもタイミングが悪くて、自分の気持ちに気づいた時には手遅れだったんだよね。
読み終えた後のハッピーエンド感の中にちょっと悔しさが混ざってしまう。どうしても自分を責めずにいられない誠人を思って悲しくなってしまう。誠人はそういう人だから。
これからも何万回と写真を見返して、静流との思い出を抱えながら生きていくんだろう。時に辛いと思うけど、頑張ってほしい。幸せであってほしい。