メモ書き程度の読書記録

3日に1冊程度更新します

サービスを超える瞬間 高野登 2020/11/17~20

 

リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
 

 

リッツ・カールトンを利用したことはないが、どれほど素晴らしいホテルであるのかが伝わってくる本であった。高級ホテルとは名だけを聞いてもかなりのレベルの期待値が引かれる事になる。それを満たすだけではいけない、と。それでは満足で終わってしまう。いかに感動、感謝まで感じてもらうかがリッツ・カールトンが目指しているホスピタリティであった。
 
本書にいくつかこれまでのお客様からの感謝状が届いた例が挙げられているが、どれも素晴らしかった。従業員全員が頭を捻り、最高のおもてなしを施す。各部署の連携はもちろん、各々がリッツ・カールトンの信念を理解しているからこそできるミスティークだと感じた。
 
この本を読み終わって、すぐにリッツ・カールトンホテルの予約に踏み切ってしまった。

スロウハイツの神様 下 辻村深月 2020/10/24~26

 

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 文庫
 

 

スロウハイツに住んでみたくなった。最終章、千代田公輝の真っ直ぐな優しさが胸の中に心地よく残る。環の暗く悲しい過去に何も言わず、気づかれないよう寄り添う姿、これが人を想うということかもしれない。誰しも辛い過去や忘れたいこと、忘れられないことはあると思う。それに真っ向から立ち向かう環、そこから逃げも隠れもせず受け止めようとする公輝、反応は様々だけど、とにかく逞しく、強い。
 
環、スーの恋愛事情もなんだかもどかしくて、もっとうまくいかないものかと思いながらも、恋愛ってこうゆうこと多いよなと少し納得してしまう。好きな人を前にして、振り回されている自分、依存している自分がダメだと気づいても、離れられない。そんな不器用さに応援したくなる。
 
もう少し黒木編集長のことが知りたくなった。ザ・仕事人というような売上にこだわりすぎるがあまり、かなりの反感をかってしまう彼。どんな過去を持っているのだろうか。チヨダ・コーキが辛い時、唯一関わりがあったのは彼だけであって、だからこそ絶対の信頼を置いている。この二人のコンビが好き。
 
辻村さんいつも楽しませてくれてありがとう。
電車の時間が待ち遠しいです。

スロウハイツの神様 上 辻村深月 2020/10/18~23

 

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2010/01/15
  • メディア: 文庫
 

 

クリエイターたちの物語。漫画家、脚本家、画家。
単純にこんな生活ができたら楽しそうと思ってしまった。けど、現実は厳しいだろう。
小さい頃からの夢はある日自分を苦しめ始めるんだろう。
もがいてもがいて、チヨダ・コーキ、環のような人間に近づきたくて仕方ない彼らの憤り、焦り、不安が伝わってくる。
 
小説を読んでいると、キャラクターが多く出てくるが、辻村さんの作品では各人物が鮮明にイメージされるため、物語に深みが出る。クリエイターが集まれば癖もつきもの。なぜかその癖が心地いい。優しい世界でしか描けない男がいれば、残酷な自分の過去を世間に晒す女もいる。愛すべきキャラクターたち。
 
さっさと下巻を読もう。

家族シアター 辻村深月 2020/10/14~17

 

家族シアター (講談社文庫)

家族シアター (講談社文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: 文庫
 

 

7つの短編物語。心温まるエピソードもあれば、心苦しいものもある。
その中でも、「孫と誕生会」は目頭が熱くなった。頑固で真っ直ぐなおじいちゃんと孫のお話。友達の誕生会に呼ばれなかったり、呼ばれたと思ったらプレゼントが被って嫌な思いをしたりと、小学生からすれば結構悲しいことが度々起こる。小学生ほど繊細な時期ないかもしれないな。
 
そんな時、おじいちゃんは小うるさいことを度々口にしてしまうのだが、竹とんぼを学校で教えるイベントが功を奏し、実音との関わりに変化が訪れる。
 
おじいちゃんはおじいちゃんらしくいればいい。誰よりも実音を大切だと思っているし、他の子より贔屓くらいする、家族なんだからそれくらいいいと思う。普段口にできない想いは過ごした時間の中で温まり、やがて伝わるものだと思う。愛情たっぷりのおじいちゃんになりたい。

すごい無意識 梯谷幸司 2020/10/13~15

 

なぜかうまくいく人のすごい無意識

なぜかうまくいく人のすごい無意識

 

 

無意識に繰り返される自分の言葉にどれほどの影響を受けているか実感した。メタ無意識が無意識の形を決めているのか。本書に書かれていたいくつかの例が自分の実生活の中でも当てはまり、背筋がゾクゾクした。
 
中でも「〜したい、〜なりたい」という表現は、今その状態になっていない前提を作り出してしまうことに気がついた。健康になりたいと思って、ヨガをしたり、サプリメントを飲んだりしている人が、病気になってしまうことがよくあるそうだ。無意識のうちに前提を作り出すと、こうも現実として現れるものかと驚いた。打開するためには「もっと」「よりよく」といった言葉をつけると、前提が健康であることになる。
 
「思考は現実化する」も読んでみよう。

ホワイトラビット 伊坂幸太郎 2020/10/10~12

 

ホワイトラビット(新潮文庫)

ホワイトラビット(新潮文庫)

 

 

大どんでん返し。面白すぎた。物語は、一つの立てこもり事件を描いている。ただ、普通ではない。そもそも家に死体があったり、犯罪グループが絡んでたり、時には警察を騙したり、と。状況は複雑なのだが、読みやすさが抜群で後半の種明かし部分ではいよいよ手が止まらなくなる。え、え、この事件どうなるのと思わずにはいられない。
 
作中に出てくる黒澤の頭のキレには惚れ惚れしてしまうが、兎田も奥さんのためによく頑張ったと思う。彼らの緊迫したシーンが作品を素晴らしいものにしてくれている。
 
きっと伊坂ワールドにはまってしまうだろう。

余命10年 小坂流加 2020/10/07~09

 

余命10年 (文芸社文庫NEO)

余命10年 (文芸社文庫NEO)

 

 

余命10年って告げられたらどうするかな。
とことん楽しいことをして、幸せな時間を過ごしたいと思うけど、現実は厳しい。激しい運動はできないし、お酒だってそんなには飲めない。恋人と付き合って結婚に踏み切ることだって簡単じゃない。
 
茉莉は死を怖がらないために、その場その場を楽しんできた。死にたくないと思わないために。でも、中学の同窓会の日、どうしても忘れられない人ができてしまった。初めは自分の心に嘘ついて、病気のことも伝えず、ごまかそうとしてきたけど、ダメだった。彼が好きすぎて一緒に居たくてたまらなかった。彼といる時が本当に生きていると感じる瞬間で、それと同時に死にたくないと思ってしまう自分もいる。今までそう思わないために避けてきたのに、優しくて、穏やかな彼に触れたくて仕方ない。
 
茉莉が思い出を捨てに行った校舎に8年越しに向かう和人はかつての弱くて脆かった彼からたくましく変わっていた。茉莉の想いは通じたんだね。2人とも重い運命を背負いながら生きていく姿に励まされた。涙より切ないラブストーリー。